秋の七草はなぜ食べられているのか?これだけは知っておくべき種類と食べ方!!


はじめに

春の七草と共に、日本の自然の美しさを表す秋の七草。

古来日本人は自然を愛し、その中に溶け込むようにして暮らしてきました。時には夏の日照りや、冬の肌を切るような寒さにさらされても、自然は敵対し征服すべきものとは捉えず、人間も自然の中の一部であるとの思いは変わりませんでした。


秋の七草の由来って??

秋の七草

秋の実りの季節、栗や柿、むかご、アケビやキノコなどの自然の幸を求めて野山に分け入った人々の目に、美しく咲き乱れる秋の野の花々は、どのように映ったことでしょうか。ちなみに「花野(はなの)」と言う俳句の季語が有りますが、これは春の野原のことではなく、秋の野原を指した季語です。

このような日本人の自然観が在ったならばこそ、万葉の歌人山上憶良(やまのうえのおくらは、この有名な二首の歌を詠んだと言えるでしょう。

「秋の野に/咲きたる花を/指折り(およびおり)/かき数ふれば/七種(ななくさ)の花」
「萩の花/尾花、葛花/瞿麦(なでしこ)の花/女郎花、また藤袴/朝貌(あさがお)の花」

ここに詠まれている「朝貌の花」は、現代の「朝顔」「木槿(ムクゲ)」「桔梗(ききょう)」などのいずれかであろうと諸説言われていますが、一般的には「桔梗」を指すものとされています。

現代に伝えられている秋の七草は、この山上憶良が詠んだ二首の歌に由来しているのです。萩やナデシコ、キキョウなどは栽培もされますが、今でも秋の野原を歩けば出会う花ばかりが詠まれています。

殊更に栽培種ではなく、野の花を、日本の秋を代表する草花として今に伝えて来た、日本人の自然を愛する心を表しているのです。


全種類って言えますか??実は覚え方があるんです!!

さて秋の七草ですが、種類は先程ご紹介しました山上憶良の詩に由来する、ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウの7種類。

1種類ずつ見て行きたいと思います。

まずはハギ:古くから日本の秋の草花を代表するものとして親しまれ、俳句や和歌に詠まれてきました。万葉集に取り上げられた植物の中では1番多く、141首(一説には142首)。夏の終わり頃から咲き始め、赤紫色のマメ科独特の形をした花をつけます。

ススキ:お月見のお供え花として欠かせないモノ。箱根の仙石原や、奈良県曽爾高原(そねこうげん)の、一面に黄金の穂が揺れる美しい風景は、季節になるとテレビでも取り上げられます。

クズ:日当たりの良い土手や草原で、一面を覆いつくすように繁茂と言うかはびこって、時には人を困らせています。なかなか美しい赤紫色の花を咲かせますが、葉の影に隠れてあまり目立ちません。

ナデシコ:日本女性の、控えめながら凛としたたたずまいを表す花として用いられます。
大和撫子、ナデシコジャパンなど。詩歌の方面では、可愛らしい子供を指す言葉としても使われます。

オミナエシ:漢字で書くと「女郎花」。黄色い小花が集まって咲きますが、「男郎花(おとこえし)」と言う花もあって、こちらは白い花。

フジバカマ:小さな紫がかったピンク色の花が群がって咲きます。かつては日本各地の河原、河岸に群生していましたが、今は数も減り、環境省の準絶滅危惧(NT)種に指定されています。香りを楽しむ花です。

最後はキキョウ:栽培種でもあり、静岡県香勝寺(こうしょうじ)や、京都の蘆山寺などが見どころとして有名です。

秋の七草の覚え方ですが、春の七草の方は「セリ、ナズナ/ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ/スズナ、スズシロ/春の七草。」と、語呂も良いし、スッと口ずさめる方も多いですよね。

でも秋の七草の方もちゃんと覚え方は有るのです。

山上憶良の詩だと並び方は、ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウですが、これを並べ替えて、「ハギ、キキョウ/クズ、フジバカマ/オミナエシ/オバナ、ナデシコ/秋の七草」

どうです?ちゃんと五七五七七に収まるのです。ちょっと語呂は悪いけれど。


食べて良し!!秋の七草の食べ方を知らない人は人生の半分を無駄にしている!!

秋の七草2

「君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ」百人一首の中の光孝天皇の詩です。この詩にも詠まれるように、春の野草は野原で人の手で摘んだものを、そのまま食用に出来ました。

春の七草もこの詩の「若菜」の中に含まれていますし、なによりお正月7日の七草粥で現代でも広く食べられています。

ですが残念ながら秋の七草には、このような直接的な料理への利用法は少ないのです。ススキをガシガシ食べたいとは、誰も思いませんからね。

では全く口に出来ないかと言うとそうでも無く、クズは食用になるのです。春先のまだ生え始めた若葉や秋に咲く花、つるの先っぽの柔らかい部分を、天ぷらや和え物、炒め物、汁物の実などにします。

また地中深く埋まっているクズの根も、堀り起こし、砕いて水にさらしたものから澱粉を取り出します。いわゆる葛粉ですね。料理、菓子、風邪薬の葛根湯にも葛が使われています。

桜で有名な奈良県の吉野地方で採れる葛は、吉野本葛と呼ばれ、有名な料亭で料理のとろみをつけるのに使われたり、高級和菓子の原料になったりします。なにせ自然に生えているものを探して掘り出すのですから、手間も労力もかかり、現在では貴重な品です。

食用ではありませんが、ススキの根には解熱、利尿作用が有り、ハギやキキョウの根には咳止めの効果が有ります。漢方の生薬「桔梗根」はキキョウの根を干したものです。

フジバカマは香りを楽しむものです。平安貴族は乾燥させたものを匂い袋として、袖の内に忍ばせました。現代でも草全体を日陰で乾燥させ、きざんで布袋に入れ浴槽に浮かべます。湿疹、かゆみ止め、疲労回復などが期待できます。

カワラナデシコの黒い種は「瞿麦子(クバクシ)」と呼ばれ消炎、利尿効果が有ります。

オミナエシの根を日干しにしたものを敗醤(はいしょう)と呼び、抗菌、鎮静作用に効くとされます。


おわりに

「春の七草は全部食べられるのに、秋の七草はどうして食べられないの?」と思われる方も有るでしょう。これはもともとの由来が違うのです。

古来日本には、年の初めに野原へ出て食べられる草を摘む、「若菜摘み」と言うならわしがありました。また中国から伝わった風習で、「人日(じんじつ、1月7日)」に7種類の菜を入れた吸い物を食べる、と言う行事がありました。

この2つが結びついて、正月の7日に7種類の野草を入れた粥を食べる「七種粥」が生まれました。そしてこの粥に入れる7種類の野草を、春の七草としたのです。つまり春の七草は、食べられることを前提として選ばれたのです。

これに対して秋の七草は、食用になるかどうかを考えて選ばれた訳ではありません。

まぁ本当のところは、山上憶良さんに聞いてみなければわかりませんが、日本の秋の野原を見渡して、心惹かれる草花を歌に詠んだのでしょう。

そしてそこに詠まれた草花を後の世の人が、「秋の七草」に決めたのです。

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